「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」​三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。

認知症と紛らわしい病気

◎脳アミロイドアンギオパチーとは?

βアミロイドが脳に沈着する疾患として、アルツハイマー型認知症と脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloidangiopathy:CAA)の2疾患があります。それぞれ家族性と孤発性が知られていて、この2疾患は合併することがあります。

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脳アミロイドアンギオパチーは孤発例がほとんどで、βアミロイドが脳皮質や軟膜の小血管壁に沈着して、動脈硬化・肥厚・狭窄、微小動脈瘤、解離を来します。このため、脳表面に近い脳実質の非高血圧性脳出血や脳虚血、一過性神経症状、白質脳症から急速進行性認知症が出現する可能性があります。

これらの症状がなくともアルツハイマー型認知症では、これら血管の変化が高頻度に観察されます。血管周囲に沈着したβアミロイドが炎症を起こして人格変化やうつ状態、行動異常の原因となることがあります。

白質脳症(leukoencephalopathy:種々の原因によって起こる)に対し、副腎皮質ステロイドが効果を示した例が注目されています(CAA関連炎症に有効)。この病態は、アルツハイマー型認知症の治療としてβアミロイドに対する抗体を投与したときの副反応と同じものと考えられています。確定診断は病理学的になされますが、神経画像と臨床症状から疑診はできます。

現在、βアミロイドを標的とするPET検査による診断が試みられています。脳アミロイドアンギオパチーから皮質下出血を来した場合、血腫除去術を行うと、血腫周辺に出血することがあるので、禁忌もしくは厳重注意とされています。