「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」​三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。

認知症と紛らわしい病気

◎多発性硬化症とは?

多発性硬化症は病気の起こり方や経過を聴いた上で、血液、脳脊髄液の検査をし、MRI検査をすれば正しく診断ができます。

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診断がつけば、いくつかの薬によって治療でき、多発性硬化症に伴って起こる認知症を防ぐことができます。現在、わが国で使用できる治療薬は5種類7製品があり、各治療薬の特徴はそれぞれ異なっています。

急性増悪期には、一度にステロイドを大量に投与します(ステロイドパルス療法:高用量メチルプレドニゾロン静注投与もしくは経口投与)。

その後少量のステロイド剤を追加します。再び悪くならないようにインターフェロン・ベータを注射することもあります。ただ、視神経脊髄炎の人にはインターフェロン・ベータは使用しない方がよいでしょう。

最近、神経保護作用の重要性が注目され、フィンゴリモド(商品名:ジレニアカプセル0.5㎎、イムセラカプセル0.5㎎)という免疫機能を抑える薬が多発性硬化症の悪化を予防するために使われています。免疫能を抑えますので、感染症が悪化することもあり、経験のある医師によって慎重に投与されるべきです。

さらに、ナタリズマブ(商品名:タイサブリ)が承認されました。適応症は「MSの再発予防および身体的障害の進行抑制」です。本剤は、MSに関連があるとされるリンパ球が脳に入らないようにブロックする作用があると考えられています。

副作用として、脳の感染症「進行性多巣性白質脳症(PML)」「ヘルペス脳炎」「髄膜炎」や過敏症、日和見感染症が挙げられています。中でも脳の感染症には特に注意が必要で、添付文書「警告」にも記載され、使用にあたっては特段の留意が求められています。