「ミコト……、嘘だろ。何でだよ! 俺のために死ぬなんて……馬鹿だ。」

タクの目は、涙で何も見えなくなっていた。そして地面に倒れ込み、両手をついて泣いた。自分はもう、どうなってもよかった。

「全て終わりだ……。」

静まり返った暗闇の中に、タクの鳴き声だけが響いていた。

「そう、全て終わりました。」

その声はミコトだった! 生きていたのだ!!

「ミコト!! 無事だったのか!」

タクが喜んだのもつかの間だった。タクの目の前には、ベッタリと黒紅色の血に濡れたミコトが立っていた。タクの顔から、一瞬にして血の気が引いた。

「ひどい血じゃないか!」

しかしミコトは、全く痛みを感じていないようだ。何事も無かったかの様に膝を落とすと、タクに優しく微笑みかけ、薬草で手当てを始めた。

ミコトの体に大量についているその血は、モンスターの返り血であると、タクはすぐさま気付かされた。これこそあの時のカクテル、“ブラッディ・マリー”が意味していたものだった。しかし一体何が起こったのか、タクには全く理解出来ない。