第4 破棄自判

前述したとおり、原判示第一につき、D医師が「平成十一年二月十一日午前10時44分頃、甲病院でAの死体を検案した際」に「異状を認めた」と認定した原判決の認定には、誤りがあり、この事実誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。

そうすると、原判決は医師法違反被告事件(原判示第一)に関する部分につき破棄を免れないが、原判決が被告人に負担させた訴訟費用は原判示第二事実と共通なものであるから、刑訴法第397条1項、第382条により原判決全部を破棄した上、同法第400条ただし書により、直ちに自判すべきものと認め、医師法違反被告事件については当審において予備的に変更された訴因に基づき、次のとおり判決する。

(原判示罪となるべき事実第一の事実に代えて当裁判所が新たに認定した事実)原判決の罪となるべき事実第一中、「平成十一年二月十一日午前10時44分頃」とあるのを、「平成十一年二月十一日午前10時44分頃及び同月十二日午後1時頃」と改め、「右異状を認めたときから」を「右異状を認めた同月十二日午後1時頃から」と改めるほかは、原判示と同一である。

(上記認定事実についての証拠の標目)省略
(法令の適用)省略

よって、主文のとおり判決する。

医師法第21条に関する東京高裁判決の概要

医師法第21条は、「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と定めている。争点の一つであった「医師法第21条に定める『検案』の意義」につき、東京高裁は以下の見解を示した。

1.医師法第21条に定める『検案』の意義

東京高裁は、「医師法第21条にいう死体の『検案』とは、医師が、(死亡した者が診療中の患者であったか否かを問わず、)死因を判定するためにその死体の外表を検査すること」と明示し、括弧部分「死亡した者が診療中の患者であったか否かを問わず」との意味は、「医師が、死亡した者が診療中の患者であったことから、死亡診断書を交付すべき場合であると判断した場合であっても、改めて死体を検案して異状があると認めたときは、医師法第21条に定める届出義務が生じる」と説明している。