解散後、校門であらためて校舎を振り返る。黒ずんだコンクリートの壁に耐震補強の跡が見える。お世辞にもきれいとは言えないけれど、校舎に惹かれて来たわけではないからそれはかまわない。むしろ歴史を感じさせる分、中途半端に新しい建物よりも良い印象に映る。

僕は中学の頃から漠然とこの大学に来たいと思っていた。数多くの著名人を輩出しており、そういった方々が書いた本を読んでいると、最初は淡い憧れだったのが次第に目標に変わっていった。

ただ、高校まで野球ばかりしていた僕にとって、この大学入学というハードルはかなり高かった。中学高校時代の成績は下でもないが上でもなく、先生からも褒められもせず怒られもせずという程度だったのだ。

けれども、目標が決まるとがむしゃらにやるタイプであることと、対ヒトになると途端に何もできなくなるが、一人で放っておかれるとそれなりに集中して頭を使えるという性質は、そのハードルをクリアするのには都合が良かった。

一年浪人はしてしまったけれど、最後に神様が微笑んでくれた結果が今なのだ。

ひとまず上ることができた、本で見た諸先輩方がいたフィールド。興味を誘うたくさんの分野が思い浮かぶ。その中から自分がじっくりと追及できるものが見つかるだろう。それはきっと無限に上っていける可能性がある。

もちろん一つのことだけではなく、たくさんの経験もして、ともすると殻に閉じこもってしまう自分も変えていきたい。それも今からここで成し遂げることができるだろう。見晴らしがいいところまで行きたいし、新しい景色も探したい。

そんな茫漠とした期待も抱きながら、建物を見上げた。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『桜舞う春に、きみと歩く』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。