ブルーストッキング・ガールズ

「そのおばあさんてね、いつもにこにこしていてね、とても明るい人だったのよ。でもね、一粒種の息子さんがね、日露戦争に出て、戦死して、お骨になって帰って来てから、何かおかしくなっちゃって。それから、そのおばあさん、家に閉じこもったまんま。心配して近所の人が見に行くと、布団をかぶってウーウーって唸ってるの。『おばあさん大丈夫? お腹は空いてないの?』って隣りのおばさんが、おむすびと味噌汁を置いてくるの。日に三度。そのときは、おばあさんは布団から出てこないんだけど、次に行くときれいに食べられていて……だけど七日目の夜、雨がしとしと降って、生暖かい風が吹く日、いつものように隣のおばさんがおむすびを持っていくと、突然コーンと叫んで飛びかかって、おばさんにがぶり……」

少女たちは口々に「止めて」「きゃー」などと叫んだ。

「そう! そのキツネ憑きだ」

木島は大きな声で見得を切るように胸を張った。

「私はこれから、東京帝国大学の医学部精神科の博士となる」
「木島先生は帝大の先生だったんですか」

うっとりと晴が見つめる。

「ちがうの。そのフリをするということよ」

多佳はすかさずたしなめた。

「そう、田中トメ君を、キツネ憑きということにして、親分をあきらめさせるんだ」
「そんなことできません」

美津は声を荒げた。美津にこんな力があるとは、みんなはびっくりした。