ブルーストッキング・ガールズ

「トメさん、青鞜社のここでの支部長は私よ」

晴も立ち上がった。

「晴さん、明治の女のために私たち頑張りましょう」

トメは晴の手を握りしめた。

「トメさん頑張りましょう。美津さん、多佳さん、喜久さん、私たちはブルーストッキング・ガールズなのよ」

晴が友を見渡した。

「悪い女郎屋の親分なんかやっつけるのよ」
「多佳さん、喜久さん……美津さん、きっと救ってくださいね」
「そう、今、この土地で、廃娼運動の狼煙が上がるの」

晴が高々と手を上げた。

「晴さん、今から二丁目の春日楼に乗り込むわよ」と多佳も立ち上がって、晴に同調した。

「コーン」
「コーン」
「コーン」

タガが外れたように四人は踊り始めた。そのとき、美津の父が襖の向こうから声を掛けた。

「みなさん入りますよ」

孝太郎は入ってくると、トメをじっと見て、一息ついて言った。

「トキさん、いやトメさん、春日楼のご主人が迎えに来ましたよ」
「お父さん……」
「大丈夫だ、美津。お前は心配することはない」
「お父さん、トメさんをどうするの」
「すまない。トメさんのことは分かっていたんだ。こうすることが、トメさんにとっても、いちばんいいんだ」
「ひどい、お父さんはひどい」

木島がそっとそばに寄り、話しかけた。

「ご主人でいらっしゃいますか」

孝太郎はびっくりして目を見開いた。

「こちらは?」
「東京帝国大学の教授をしております、木島と申します。申し訳ありません。断りもなく勝手に上り込んだ無礼をお許しください」
「美津さんのことが心配で、診て頂こうと」
「ああ、あなたはたしか女学校の紅林先生でしたな……それで、娘は」
「ええ、それよりも」
「それよりも……」