「なかなかうまい方法ですわね」
エリザベスが言った。

「購入価格を見ますと二十万エスクードでした。正直、私どもはかなり安い買い物と判断いたしました。最低その数倍くらいの値段をつけてお店に出せそうな絵でしたから」

宗像とエリザベスの前に、新たに並べられた三枚の絵は全て風景画だった。一枚は海の風景を、もう一枚は山の風景を、最後の一枚はどこかの街を上空から俯瞰的に描いたものだった。製作年号が全て2000と記されているところから判断すると、全部、昨年描かれた絵のようである。描き込まれたサインは確かにA.Howellとなっている。

フェラーラにはただの一枚も風景画はなかったが、店主の言うように、もし彼が風景画を描くとすれば、まさにこのような絵になることを予想させるような絵だった。

「亡くなったはずのフェラーラが、実はどこかで生きていて絵を描いているのでしょうか? 多少スタイルも変えて、今まで描かない風景画も描いて。しかも、A.Howellという別の名前を使って」

エリザベスは少し気味が悪そうに言った。

「でもなぜそんなことを? 誰かが、フェラーラ風の絵を描いているという可能性の方が高そうです? ところでロドアさん、A・ハウエルという画家に心当たりはありませんか?」