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「そこへ、今度は私が……」

「ええ、突然宗像さんが現れて……。もう機中の人と思っておりましたからびっくりです。でも、あなたもフェラーラの絵を探していたなんて、まったく信じられないわ。凄く迷ったのですが、あれ以来ずうっと、誰かに相談に乗っていただきたかったし。信頼申し上げられる方と判断させていただきました。ですから、これまでの経緯を踏まえて失礼ながら、全てあなたに話そうと決めたのです」

「そういうことですか。それでよく分かりました。でも現実には到底ありえない不思議なご縁ですね。ところでエリザベスさん。問題のこの絵なのですが、一見フェラーラ作とも見えますが、少し奇妙なのですよ」

「奇妙? まあ何でしょう?」

「まず左下の隅をご覧ください。一九九九年と年号が入っています。これでは、フェラーラはまだ生きていることになってしまいます。それにサインがありませんね」

「そうですね、古い絵に誰かが新しく1999と書き入れるのも変ですし?」

「私、フェラーラの絵は既に一点、エストリルのカジノで実物を見ておりますし、画集では幾度となく見ています。この絵は、色調、テクニック、そしてこの女性のモデルと、そのどれをとってもフェラーラの絵そのものなのですが、しかし腑に落ちないところもあるんです。それは……例えば、絵の背景に薄っすらと表れる、抽象的で幾何学的な模様のような書き込みが見えないことです」

「抽象的な幾何学模様?」
エリザベスは首を傾げた。