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店主は良さそうなお客と判断したようで、口元に笑みを浮かべながら言った。

「いえ残念ながら。でもいろいろわけがおありのようですね。この絵には大変ご興味を持たれたようで、さすがにお目が高くていらっしゃる。四点まとめていかがですか? 六十万エスクードで。お買い得ですよ」

二十万で買いつけて六十万とは三倍ではないか。人につけ込む商売をするやつだと、宗像は気分が悪くなった。しかしエリザベスは、このような場合、仕入れ値の三倍や五倍、いや十倍で売ってもおかしくないことを良く知っていた。

「それで結構です、四点まとめて買わせていただきます。今日はカードで全額を支払いますから、とりあえず保管しておいてください。郵送費や保険料も追加してお願いしますね。全てロンドンへ送っていただくことになりますから」

売買成立で、店主は予想しないほど良い商売になったと上機嫌だった。宗像はこの四枚の絵を写真に撮らせてもらいたいと店主に頼んだ。

「もう絵は私どものものではございません。御随意にどうぞ」
ロドア氏は慇懃に答えた。カードにサインを終えるとエリザベスは宗像に声をかけた。

「宗像さんコインブラはここからそれほど遠くありませんね。《コインブラ18》画廊に行ってみませんか?」

「そうですね、その画廊を訪ねてみれば何かが分かるかもしれませんね。でも、披露宴はどうされるのですか?」

「私にとっては今が非常事態です。とりあえず連絡を入れて欠席させていただきますわ」