第2章 医師は認知症をどのように診断するのか?

PETとアミロイド仮説

3)solanezumabは、アルツハイマー病に関係すると考えられている脳のアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質に結合し、脳に蓄積する前に除去を促す。同薬の臨床試験も含め、これまでのアルツハイマー病の治療や予防を目的とした研究のほとんどが主に患者の脳内に蓄積するAβを標的したものだった。これは、以前からアルツハイマー病の発症や進行にAβが関与していると考えられてきたからだ。

4)「Aβを標的とした治療薬の臨床試験で対象者の30%に蓄積したAβがないのであれば、その試験は成功するはずがない。

5)Aβの除去がアルツハイマー病を改善するという前提を再考する必要がある」と話し、「遺伝学的根拠からAβがアルツハイマー病に関与していることは確実だ。しかし、発症してからAβを取り除けば患者の状態が良くなるのかどうかは分かっていない。

6)最近は研究に対する資金が拡充されつつあり、Aβ以外にもタウやニューロンの炎症、脳のエネルギー利用といったさまざまな因子について研究が行われるようになってきた。アルツハイマー病を発症しても、記憶力をある程度維持したまま他の原因で死亡するまで進行を遅らせることができれば、治療の成功といえるだろう。