「なんですと?」
「……洛瑩(ルオイン)は、皇帝陛下の、嬪(ひん)となることがきまりました」

なんということだ。

「いぜん、厳嵩(イエンソン)殿の邸で、洛瑩(ルオイン)が演技を披露したことがありまして、それからずっと、娘のことを気にかけてくれていたようです。このたびの婚礼は、厳嵩(イエンソン)殿が、とりはからってくれたのですよ。まことに……」

それから曹察(ツァオチャー)と住職のあいだに、どんな会話が交わされたか、おぼえていない。やがて曹洛瑩(ツァオルオイン)が、粥をはこんでくれたが、味がしなかった。

塒(ねぐら)に帰っても、どこかに頭を打ちつけたい気持ちを、抑えることができなかった。

忘れろ。忘れるのだ――あの子のためを思うのなら。

あの子にとっては、よろこぶべきことではないか。女子に生れて、至尊のそば近く仕えることは、願ったって、成就するものではない。嫁ぎ先としては、これ以上ないものではないか。

おお……おお!

わけのわからない遠吠えのようなおめきが、口の端からもれた。