宮中での配属先が決まり、曹端嬪(ツァオたんぴん)付きとなった王暢(ワンチャン)。そこでの日々は刺激的でもあり、個性的な面々との出会いでもあった…。

(3)

「正徳年間から、何度となくおとがめを受けてはいたのだが、嘉靖帝が即位されてから、刑部に旧悪のかずかずをあばかれてな。家奴を撲殺し、支配地の娘をうばい取り、親が怒って訴えれば、根も葉もない罪をなすりつけて殺し、家産を没収…あげていけばきりがない。それでも、太后さまにとっては肉親の情がおありなのであろう、再三、釈放の懇願をなされている。今回もそれだ。だが、万歳爺(ワンスイイエ)は、われらに『取り次ぐな』といわれている。悪事をはたらいた者は、貴賤を問わず、罰されなければならぬ。いくら皇太后さまのたのみでも、法は、天下のすみずみまで行われなければ、国をおさめることなどできぬ。そう思わぬか」

「はい…」

「しかし困ったぞ。お二人の仲は、もはや冷えたものだ。われわれには修復のしようがない。しかも、張(チャン)太后が尊崇するものは、佛法だしな。道士より僧侶を優先なされば、万歳爺(ワンスイイエ)とは、接点がない」

「万歳爺(ワンスイイエ)は、佛法がおきらいなのですか」