3章 世界のパラダイム

ビフォアコロナ アフターコロナ

7 利己的から利他的へ​

18世紀以来、世界を豊かにしてきた理論は、このリカードの比較優位説であることは確かなのですが、約200年近く経過し、私たちは盲点があることをはっきりと認識しはじめたといえます。

比較優位説によれば確かに、世界経済は拡大するのですが、それは国単位の経済規模のことであり、その国の国民すべてが豊かになるわけではないという事実です。生産性の高い産業に特化し、各国間で分業すれば、豊かになるのですが、国民に行き渡らないのです。

生産性の高い企業とは実は、ひとにぎりの企業です。わずかな企業に富が集中します。強い企業に富が集中し、その企業に群がるように中小企業が下請けとして生産活動をするのですが、強い企業は本能的により多くの富を求めて、下請けに厳しい価格引き下げを要求します。

こうして、富は、ほんのひとにぎりの企業に集中します。99.2%が中小企業と言われる日本です。0.8%の企業しか富を得られないのです。

さらに貿易で得た富は金融資本という形で蓄えられます。その金融資本は、実物経済活動を伴わない、マネーゲームでさらに巨大なものになります。現代では、実物経済の4倍とも5倍ともいわれる巨大な塊になっています。

「8人の資産が計4260億ドル(約48兆7千億円)に上り、世界人口73億5千万人の半分の合計額に相当すると指摘。」(出典:「世界の富裕層上位8人の資産、下位50%と同額」 日本経済新聞 2017年1月16日)。という異常な事態です。

上位1%の富には、下位の者が追い付くことは不可能であり、上位1%の巨大な富は自立的に増殖を繰り返し、暴走をはじめます。トマ・ピケティ氏は、『21世紀の資本論』で、過去100年以上にわたる世界各国のデータを調査しました。ピケティ氏は、r(資本の収益率)>g(経済成長率)の数式をとりあげ、一方に巨大な資本の蓄積が進み、一方に貧困が蓄積することを実証しました。

自由貿易の恩恵は決して広く行きわたらない、また、金融資本の暴走は止まらない。資本主義の骨格である自由貿易とマネーの根本が問われることになってきた、ということです。金融資本の暴走について、身近な例を挙げておきます。