時給千円で、20万円の収入を上げようとすれば、月間、200時間働かなければなりません。例えば、コンビニで働くとします。毎日、立ち仕事を8時間、25日間働き続けなければ20万円を手にすることはできません。海外からの優秀な留学生が、コンビニで学費を稼ぎ、疲れた体で、夜遅くまで、卒業論文に取り組んでいます。

これに対して、ネットトレードがあります。ご経験のある方も多いでしょう。どうでしょうか。わずか1日か、数日もあれば20万円を手にすることがあります。その費やした時間は、おそらく、15分程度ではないでしょうか。

片や25日、片や15分。実は現代の経済格差、貧富の差は、ここに象徴的に表れています。ピケティ氏はr>gで表しましたが、時間当たりの収入を比較しますと、このケースでは実に800倍の開きが出ます。ウォール街の金融資本は、超高速な人工知能を使い、増殖させているのです。

自由貿易と金融取引におけるこの巨大な欠陥に、200年の時を経て、世界はやっと気づいたということではないでしょうか。どうすればよいのか。

システムの欠陥を補うのは人です。強い企業は称賛されるものです、また金融も不可欠です。

利益を上げること自体は悪いことではありません。利益を上げても、自らの力をはるかに上回ると感じた利益を、広く社会に還元すればよいのです。

しかし、善意に期待しても、人は社会に還元しようとしません。ピケティ氏はr-gを税金で取り立てればよいと考えます。問題は経済理論ではなく、経済の欠陥を埋める政治が機能していないということになります。

努力と才能に恵まれ巨大な富を手にしたビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏がヒントになります。彼らは巨額の富を得たことに感謝し、社会に還元します。

競争を維持するために健全な努力を行い、富を得るそうした幸運に感謝し、それを社会に還元する時代に向かわなければならないと思うのです。これからの地球環境や人間の幸せのことを考えれば、人類が国境を越えて叡智を出し合い、助け合わなければならないことは誰の目にも明らかです。

また、国境とは全く無関係に動くパンデミックを封じ込めるには、世界の科学者が力を合わせてワクチン開発や薬の開発を目指すことは不可欠です。今回のパンデミックで世界の科学者がこれほど連携して開発にあたっていることは珍しいといいます。しかし、その果実を自国のために政治的に利用しようとする国があるのが現実で、せっかくの科学者の連携を断ち切ってしまいます。

古い価値観に縛られている国家、企業、個人は頭を切り替えなければ、地球はもたないのです。利己的から利他的へのシフトは、時代が要請しているのです。