セットリストNo.2(第二章)

20 Friends – Jody Watley

火曜日の夜、予定通りの時間に新二とハンバーガーズで合流し、新二がドライブするクラウンで、浅草に向かった。

浅草までの道のりなんて、そんなに遠いもんじゃない。
六本木から、一般道を使っても1時間を少し出るぐらいの距離だろうが、行く目的が、品物をGETする。という場合、なるべく距離の少ない首都高を使うほうが得策。これが2人の一致した意見だった。

だから偵察も兼ねて、行きも首都高を使うことにした。
もし、反対側の車線で検問の気配があったり、大きな事故があったりしたら、首都高を使うのをやめて、一般道に切り替える。そういう予定にした。

新二は、自分の部屋がある芝公園の入り口から首都高速内回り線に入り、銀座方面へ向かう。
竹橋近くで、路はバンク(傾斜)しながら左に旋回し銀座線に入る。
そこからは一直線に上野、そして入谷出口を目指す。
別にアクセルを余計に踏み込まなくったって、20分も走れば入谷の出口につく。

ハイウェイ・エンドのスロープを下ると、目の前に横たわる広い道。
言問い通りを、右に曲がって5分も走ると、左側に、ミックスベリーが見える。
新二は、その店の前で車を止めた。

「この店で先方に、連絡を入れることになってるんだけど、ちょっと早く着いたから、コーヒーでも飲んで時間潰そ」

店の時計に視線をやると、1時30分だった。
2人は、公衆電話が近い席に座り約束の時間が来るのを待った。

「もうすぐ来るから、車に戻って待とう」連絡を取り終えた新二が、翔一に言った。
2人が車に戻り、1分くらいたった頃、後ろからゆっくり近づいてきた車が、2度パッシングして横を通り過ぎた。

新二は、その車の後を少し距離をおいてついて行く。
何度か小道の角を曲がり、何本かの大通りを横切る。
助手席に乗ってるだけの翔一には、どこを走ってるのか全く解らなくなった頃。
前を走っていた車が、ファミリーレストランの駐車場に入った。
新二の運転するクラウンも、それに続いて駐車場に入った。
新二は自分の車のドアを開けて降り、前の車に近づいて、乗り込んだ。

5分もすると、彼は1つの紙袋を持って何食わぬ顔をして戻ってきた。
運転席に座った新二は、
「ちょっとこれ、シートの下にでも隠しといて」と言って翔一に、前の車から持ってきた紙袋を渡した。

それを受け取った翔一は、中を覗いてみる。
国語辞典を2冊重ねたくらいの大きさに、プレス(圧力をかけて、かさを減らすこと)されたマリファナの塊が、ブ厚い透明なビニールでパッケージングされていた。

「結構、すごいよね」新二が言う。
「うん、こんなの初めて見た」翔一が言った。
「俺も」

2人はこれまで、こまかい取引を何度もしてきたが、1キロ単位で取引するのは、これが初めての経験だった。

「よっしゃあ、それじゃ帰りますか」さほど時間もかからず取引が終わり、気をよくした新二が、ため息まじりにつぶやいた。