一時よりもだいぶ日が長くなってきた。今日は風もなく暖かい。明日はさらに暖かくなるようだ。私は水を一口飲んで喉を鳴らすと、ショウ君に電話をかけた。

コール音が耳に響く間、熱い鼓動が痛いほど胸を打つ。

普段は心臓が動いていることすら忘れているが、こうして必死に恋愛をしていると、平生では味わうことのできない圧倒的に凝縮された快感や苦痛を感じることができるのだ。その全てが愛おしくて仕方がなかった。

私は今、生きている。いや、ショウ君によって生かされている。ショウ君が私の心臓を動かしているのだ。ショウ君が、私に生きる意味を与えてくれているのだ。

「美雪ちゃん、電話待ってたよ」

営業の仕事は付き合いが多く、どうしても太りやすいので普段は夜ご飯はキャベツだけにしている。キャベツを電子レンジで温めて、塩昆布と和えて食べると美味いのだという。いくらでも食べられることから、ショウ君はそれを『エンドレスキャベツ』と呼んでいる。

たわいもない話。かけがえのない時間。この電話が終われば、きっとまた孤独との戦いの日々がやってくる。

毎日不安に押し潰されそうになりながら、連絡が来ることを心の拠り所にして生きるのだ。それは砂漠の上を何日も飲まず食わずで歩き続けている私の目の前に、突然キンキンに冷えた生ビールが注がれるような気分だった。

長い苦しみの果て、やっとの想いで手にした恵みのオアシス。その瞬間の悦びは想像を絶するものだった。できれば辛い想いはしたくない。しかしこの苦しみを乗り越えたからこそ、待っている圧倒的快感の虜に、私はもうなっていた。