期首に立てた教育計画に基づいて実施したはずなのに想定した未来力に届かなかったという場合は、まず、その教育プログラムの内容が教育効果倍率を満たすことができなかったと考え、内容を再検討することが必要です。

プログラムの内容を変更することが難しい場合は、効果倍率を高く見積もりすぎたことになりますから、次頁の表のように倍率を下げて、未来力をシミュレーションしてみるとよいでしょう。

経験を積めば、教育効果倍率にふさわしい教育プログラムを作成することが可能となるはずです。本書で紹介している手続きを踏んでいけば、人が資産となるための要因が数値化されますので、利益達成の合理的手段を手にすることが可能になります。

目に見えない、効果を把握しにくい教育というものを“見える化”することで、人を軸とした経営のハンドリングが容易になりますし、経営者の意識改革がはじまるのです。ご参考までに、下に人の資産のポジショニング・マップを示しておきます。

[図2]人の資産のポジショニングマップ

現在の決算書が黒字であり、さらに第二決算書(人のバランスシート)も黒字になることが理想です。第一象限にあるように「黒字であり、未来力も強い」のが最も理想的な状態です。

次に、現在は黒字であるものの、将来に不安を抱えている状態が第二象限です。社員教育が思うように進まないなどの理由で人材力に問題を抱えていると思われます。利益を出していても、このような問題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。

第三象限は、現在赤字であり、人材育成にも問題を抱えている企業です。このような状態であれば危機的な状況と受け止め、ただちに人材育成に着手しなければいけません。

第四象限は、現在赤字であるものの、人材力が豊かであり潜在力を有している状態です。人材力を生かし黒字に転化できる可能性を十分に秘めているといえるでしょう。

このように、決算書と第二決算書を組み合わせて考えることで、経営の舵取りは大きく変わっていくのです。