すると、精神の病気(disorder)なのか障害(disability)なのかという問題に突き当たります。前述したICDでは、「精神および行動の障害」、「心理的発達の障害」などのように障害としてコード化しましたので、精神病の呼び方が障害としての呼び方に変わりました。

さすがに精神分裂病は障害名としてつけにくかったと見え統合失調症に、躁うつ病は双極性障害に、神経症は○○不安障害、人格異常は人格障害といった具合です。精神疾患から精神障害へという時代になりました。

当初違和感があり、表現上の問題ですが障害への治療とはどういうことか理解しにくかったことを覚えています。実際は統合失調症も双極性障害も、ある時に発症する病として存在し、症状緩和に努めつつも病気としての治療は変わりません。

しかし発達障害、特に大人になってからわかる発達障害は、病気ではなく、もとからあったが大人になってからわかった障害です。メンタルクリニックを受診する時には、職場でうまく行かないなどの理由でうつ症状を呈していることがほとんどですが、そのベースにあるその人の性向や特質は病気ではありません。

それが問題だとすればまさしく障害であり、発達障害という障害の上にうつ症状を発症したということになります。現在の言い方で言うと、発達障害と抑うつ障害があるということになり、なんだかよくわからなくなります。ただ言えることは、障害という概念で考えると、発達障害はまさしく治療場面に出てきた時から、まさしく障害なのです。