医師法第21条の違憲問題に関しては、当該事例は、医師法第21条の届出義務のある医師本人が当事者の事案ではない。過失の当事者は、看護師である。

被告人は、過失の当事者でもなく、直接の届出義務の対象者である主治医でもなく、当該病院の管理者である。このため、憲法第38条1項の自己負罪拒否特権への抵触については、一般論としての判決内容となったのではなかろうか。

過失の当事者が、届出義務のある医師であったとすれば、自己負罪拒否特権と正面衝突する問題であるように思う。

最高裁判決につき、【要旨1】に注目せず、【要旨2】のみを過大に流布した人々が、この問題を複雑にしたと言えよう。

東京都立広尾病院事件判決は、この刑事3判決の他に、民事の判決2つが存在している。医師法第21条理解に不可欠な刑事裁判の3判決文を紹介しつつ考察を行った。民事事件の判決も多くの教訓を含んでいるが、医療事故調査制度創設の将にルーツとも言うべき刑事事件判決の記述に留めたい。

「外表異状」の司法判断は、この刑事事件3判決を比較してこそ理解可能となる。次項では、まとめとして、医師法第21条と「外表異状」につき、医療事故調査制度の経過を踏まえて、整理しておきたい。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。