また所得が幸福度に与える別の影響要因があります。「相対的所得」や「比較所得」と経済学者が呼ぶものです。私たちは、多方面の境遇において大なり小なり他人と比較する傾向にあります。

特に自分の所得に関しては、自分と同じような仕事をして、同じような経験や資格を持っている人が自分の所得より多かったり、昇給したりすれば、残念ながらそれなりの幸福度の低下を感じるものです。そして、周囲や社会全体が、たとえば失業率が高い状況で自分も失業の境遇にあるなら、人は、意外と現状を受け入れ、幸福度が大きく低下することがないのです。

こうした他人との所得の比較が幸福度を左右する要因のひとつですが、別の見方をすると、「野心」や「嫉妬」とも表現できる個人の感情要因が存在します。一般に人の野心は所得とともに増大し、野心を抱くことで人を幸福にするはずです。ただし、挫折すれば一気に幸福度が下がることになります。

一方で他人への嫉妬は人を不幸にします。さらに人には驚くほどの適応力があることも重要な影響要因です。所得の増加や低い所得の不均衡状態にもやがて適応するからです。

もちろん、所得に限りません。結婚生活における重要な出来事、すなわち結婚、離婚、配偶者の死などに対しても、そうした状況に慣れて、次第に幸福度の高低差が薄らぐ傾向にあるのです。不可思議ではあっても、長い日々の生活には、人として必要な資質なのです。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『ストップthe熟年離婚』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。