2時間のパート(DJが、責任を持って受け持つ時間のこと)は、先が長い、はじめは重たーいリズムで踊るというよりも音を感じて、ハマリ込む感じ。今すぐ踊りたい奴らを、じらすように。やがて訪れる2時間後のフィニッシュには、気が狂うほどの絶頂感を、全てのゲストに与えるため1曲1曲丁寧に、トラップを仕掛けていく。100%の満足感を、ダンスフロアー一杯に感じてもらう、そのためだけにDJは存在する。

翔一が、再びサブDJの山崎と交代したのは午前1時を過ぎた頃だった。

「じゃあ、あとはたのむね」彼はそう言って、DJブースからダンスフロアーへ下りた。このお店によく来る常連の女の子たちに、腕を引っ張られたりしたけど、今夜の彼にはやることがある。翔一は、ゴメンのポーズを手でつくりながら、フロアーを脱出した。

片山が、今夜オーダーしてきたマリファナの数量は100グラム以上ということ、そして鷲尾が持ってくる予定の数量が、500グラム。差し引き400グラム弱が、今のところ浮いている。その浮いているものに、買い手をつけるため彼は、店を出た。

六本木には、DJをやってる知り合いがいっぱいいるがそのほとんどの者が、マリファナやその他のドラッグを、嗜む連中だ。それは、この六本木だけに限ったことじゃない。

客商売がメインの場所。東京都内で、繁華街と呼ばれてるところならおそらく何処にでも、ある程度の需要があって、需要があるのなら、しっかり供給も、されているだろう。だから、それらを手に入れる作業はそれほど難しいものじゃない。

新宿、渋谷、赤坂、池袋、このあたりの土地で、ドラッグの類は『あって当たり前』。その世界を知ってる奴ならきっとそぉ言うだろう、これが現実。

クサのオーダーをとる事なんか、電話で済むことなんだけれど翔一は、大量の人間が彷徨う夜の六本木を歩くのが好き。他のどんな街よりも、ここは楽しい。

もう、真夜中を過ぎてるのに歩道には人があふれてる。こんな時間になっても、街や人は勢いのある活気を放っている。