呼吸と姿勢で心が変わる

ここ数年、一昔前には考えられなかった青少年による奇怪な事件が多数起きています。報道では、「なんかイラ立って殺した」という理由にならない理由が多いことも不気味な要素です。いったい、なぜこのような奇怪な事件が起きてしまうのでしょうか。

東邦大学の有田秀穂教授は、脳のセロトニン神経が弱ると、うつ病やパニック障害、摂食障害などの精神症状が現れるという研究報告をしています。実際に、うつ病で自殺した人の脳を調べたところ、セロトニン濃度が一般の人よりも低かったことがわかって います。

セロトニン神経は、快感、不快感に対して過剰に反応しない平常心を生み出すので、この神経が弱るとキレやすくなるとも考えられています。

正しい姿勢によって生まれる腹式呼吸や深い呼吸は、このセロトニン神経を活性化させ、心を落ち着かせるのに役立ちます。日本人は昔から、腹を生活の様々なシーンで上手く活用し、腹(胆力)で精神をコントロールする術を体得していたのです。

日本の智慧「衣文化編」 日本人の心は腹(肚)にあり

これまで紹介してきた日本人に合った体づくりは、西洋医学や欧米式トレーニングからは発想できない方法です。日本人が長い歴史をかけて発見した、人がもつ力を最大限に発揮する「姿勢法」の効果は、戦前の武道家たちによって証明されてきました。

例えば、合氣道の開祖、植芝盛平や愛弟子の塩田剛三。日本武道の威信をかけた戦いで筋肉隆々の最強と呼ばれた米国海兵を剣の道で制した、國井善哉。皆、超越した力を発揮できたのは、姿勢と呼吸の力(肚が起点)を自在に操っていたからと言えます。

現代人が抱える体の悩みの多くは、長時間によるデスクワークや便利な生活環境による運動不足、着装すれば体幹部が整う「和装」ではなく、姿勢が乱れやすい「洋服」への複合的な環境要因による、重心バランス(中心)のブレからきています。

これらを解決するために、「着物姿勢」を実践すれば、現代の生活環境下でも「正しい姿勢」を無理なく長時間、持続させることができるので、是非実践してみて下さい。