壱─嘉靖十年、漁覇翁(イーバーウェン)のもとに投じ、初めて曹洛瑩(ツァオルオイン)にまみえるの事

(5)

「南のほうは多いらしいな。おたくらがやってる、西山楼(せいざんろう)って酒家があるだろう。あの通りの少し先に、それらしいやつらが出入りしてる店がある。枷(かせ)をはめた子供を連れて、入っていくんだ。なまりがあるから、やっぱり南のほうから来てるんじゃないのか?」

西山楼というところに引っかかった。もしかしたら、漁門がからんでいるのかもしれない。

「ぼろ儲けだよ、ありゃあ。なんせ元手はいらねえし、おれたちみたいに『仕入れ』に金がかかるということもない。売った代金は、そのまま全部が利益になるんだからな。しかも、羊や馬より、ずっと高く売れる。あんなあこぎな商売をやれば、そりゃ儲からないほうがおかしいさ。だけど、あれは、人のやることじゃない。ひとでなしだ。あんなことに手をそめるんなら、貧乏でもおもちゃをつくって売るほうが、よほどましだ」

「でも、背に腹は変えられないんじゃないですか? 金にこまれば、一時的に……」
「なにを言っている」
人さし指が、目のまえにつき出された。

「人の念ってえのは、からみつくもんだ。念力っていうだろう、アレだ。目には見えなくても、からみついてその人を斃(たお)す。山の中で、蔓(つる)をみたことがあるか? 木にからみついてどんどん太くなり、やがては木をしめ殺す。アレといっしょだ。この世でいちばん強いのは、なんだと思う?」

「さあ……」

ちょッ、おやじは舌打ちをした。