ラクナ梗塞:細い穿通枝血管が詰まって生じる脳梗塞

直径1㎜未満(200ミクロンという記載もみられます)の脳内の極めて細い動脈(穿通枝)が詰まってできる長径15㎜以下の小さな梗塞を「ラクナ梗塞」といいます。

ラクナ梗塞は基底核、内包、視床、深部白質、脳幹などの脳深部に発生します。神経症状は病巣と反対側の顔や手足の運動性あるいは感覚性の麻痺症状が主体となります。半数は、睡眠中や起床時などの安静時に発生するとされています。たいていは段階的に症状が現れ、少しずつ進行していきますが、突然発症して急激に悪化する場合もあります。

最初は強い麻痺を生じることがあるものの、意識はしっかりしていてリハビリの効果も出やすく、元気に自宅に帰られる方が多い脳梗塞です。

ラクナ梗塞は病巣が小さいため、梗塞が生じても、特に症状がみられない無症候性の症例もしばしばみられます。病巣が小さいので予後は一般に良好なのです。

[図1]ラクナ梗塞(左図と右図は別の患者さん)のMRI拡散強調画像。白く円形や楕円形に写っているのがラクナ梗塞。左図の患者さんは、70代男性。朝食の際に左手で持っていたコーヒーカップの中身をこぼした。一晩様子を見たが症状に改善なく、翌朝、“左手でコップを持ちにくい”、“左足を引きずるような歩行”などを主訴に来院。右内包後脚にラクナ梗塞。右図の患者さんは60代男性。高血圧症および糖尿病の加療中。起床時に、右手の巧緻運動障害と言葉のもつれに気づいた。左内包のラクナ梗塞

穿通枝の詰まる原因や機序は、高血圧を基盤とする穿通枝脂肪硝子変性や穿通枝分岐部の微小アテローム形成とされています。高血圧などで、細い動脈に強い圧力がかかり続けると、血管壁が痛み、徐々に厚くなってきます。

すると、血管の内腔が狭くなり、最終的に詰まってしまうのです。高血圧の管理が十分でなかった時代には圧倒的に多いタイプでしたが、現在ではアテローム血栓性脳梗塞が増加しているため、その差はほとんどなくなっています。

高血圧の他にも、糖尿病や血液中の赤血球の割合が増えて血栓ができやすくなる高ヘマトクリット血症などが誘因となることもあります。

高血圧、糖尿病、脂質異常症が合併する方も多いので、脳出血の患者さんにラクナ梗塞が合併することや、ラクナ梗塞の患者さんに脳出血の既往(微小出血:マイクロブリード)を認めることが決して稀ではありません。

また、明確な発作がないままラクナ梗塞が何箇所にも発生し、少しずつ症状が進行していく多発性ラクナを来すこともあります。この場合には、血管性認知症、血管性パーキンソニズ ム、言語障害、歩行障害、嚥下障害などの症状が現れます。

睡眠中や起床時など、半数は安静時に発生するとされています。たいていは段階的に症状が現れ、少しずつ進行していきますが、突然発症して急激に悪化する場合もあります。 最初は強い麻痺を生じることがあるものの、意識はしっかりしていてリハビリの効果も出やすく、元気に自宅に帰られる方が多い脳梗塞です。

予防のためには血圧の管理が最も重要ですが、他の脳梗塞と比べれば再発率も低く、「扱いやすい」脳梗塞といえるかもしれません。

抗血小板薬や脳保護薬などを利用し、効果が実証されている治療があります。再発予防には、抗血小板薬の服用と高血圧対策を中心にした生活習慣病の厳格な管理が大切です。

現在はこのラクナ梗塞の割合は徐々に減少し、反対に重症かつ再発率の高いアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症が増加を続けています。

※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。