第1章 脳梗塞とはどのような病気か?

脳梗塞をよりよく理解するための基礎知識

◎言語障害

言語障害(しゃべりにくい)は、失語症(運動失語、感覚失語など)、構音障害、構語障害、発音・発語障害などに分類されます。言語中枢は、大脳のブローカ(Broka,1824-1880)運動言語中枢(前頭葉)と、ウェルニッケ(Wernicke,1848-1905)感覚言 語中枢(側頭葉)があります。

この両者は弓状束を介して結合し、これらの上位に概念中枢があって、言語の音響像の記憶が一定の概念と結合して、言語や文章の意味を理解します。言語活動は、「聞く」、「話す」だけでなく、「読む」、「書く」 を加えた4要素からなっています。「音読」の際に発音に誤りがあると「錯読」といい、文字を理解できないのを「失読」と いいます。また手の運動障害はないのに文字が書けないのを 「失書」といいます。

おおまかには、失語症は優位側の前頭葉・側頭葉の障害を考えます。右利きの人では左脳に言語中枢がある確率が高く、左利きでは右脳にある場合と左脳にある場合とがあります。構音障害などは脳幹・小脳の病変を考えます。これら脳疾患以外に顎、口腔、歯牙、咽喉頭、声帯などの病変が構音障害などの原因となり得ます。

「しゃべりにくさ」を来す疾患は、

1)脳血管障害(大脳半球 や脳幹部の脳卒中)、

2)パーキンソン病、

3)球麻痺(筋委縮 性側索硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、ギラン・バレー 症候群)、4)小脳疾患(不明瞭、とぎれとぎれ、緩慢、不規則な言語)、5)口腔内障害(シェーグレン症候群/唾液分泌低下、 舌炎、歯科・耳鼻咽喉科疾患)、6)開口障害(破傷風、深頸部 感染症、石灰沈着性頸長筋腱炎)などです。

◎めまい

めまいは、患者さんのお話をよく聞くと「グルグル目が回る」、「ふわふわとふらつく(動揺歩行)」、「気が遠のくようになる」、「立ちくらみ」、「平衡感覚喪失」など、その症状は様々で、めまいの原因も様々です。まずは耳鼻科医、神経内科医を受診しましょう。

大きくは耳の病気、脳の病気、その他の病気に分けられます。耳の病気として良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴などがあります。BPPVは頭を動かすと回転性(ぐるぐる回る)めまいが起こり、数秒から数十秒で消失します。

メニエール病に罹患すると、激しい回転性めまいと吐き気があらわれ、時に難聴や耳鳴りを伴います。頻度は様々ですが、 症状が繰り返し発現することがあります。前庭神経炎も激しい回転性めまいと吐き気が起こります。難聴は伴いませんが、数日歩行が困難な状態が続きます。突発性難聴は突然耳が聞こえにくくなります。治療が遅れると難聴が後遺症として残ってしまいます。

脳の病気には脳出血、脳梗塞や脳腫瘍などがあります。小脳や脳幹部という場所の出血や梗塞の時には突然めまいが起こります。ろれつ困難、意識障害、複視、眼振なども伴うことが多く、頭痛も伴うことがあります。急激に悪化し、命を落とすこともあります。脳腫瘍では症状が突然起こることは少なくふらつきが徐々に悪くなり、腫瘍の部位や大きさによっては難聴や耳鳴り、頭痛などを伴います。

その他の病気としては起立性低血圧、不整脈、ストレス、薬剤性(抗生物質、抗ヒスタミン薬、アスピリンなど)、てんかん、 血管迷走神経反射、貧血、低血糖などがあります。めまいは様々な病気で起こる症状で、その大半は良性のものですが、脳卒中のように命を落としたり後遺症を残したりするような重篤な病気が隠れていることがあります。特にめまい以外の症状を伴うときは病院を受診してください。

医師は、救急外来のめまいは以下のABC-DEMONを念頭にと教育されています。

[図2]救急外来のめまい判断(ABC-DEMON)
※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。