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隈(くま)無き月の入(い)るを眺むるつとめてに外(ほか)に出(い)でたれば、まづいといみじう心さへぞ移りにける。
◆十六夜(いさよひ)の 葉陰に入(い)るやう 眺むるに いかにめづらしき 心地ぞせむと
【現代語訳】
一点の曇りもない月が山に入るのを物思いに沈んで見遣る睦月の早朝の事です。外に出てみますと、月に加えて心までもが移ろってしまうようにたいそう感じ入ったことです。
◆陰りのない十六夜月の姿が山の端の葉陰に入る様子を眺めます時に、あぁ、どんなにか滅多にない気持ちがすることでしょう、と感じ入りました。
【参考】
・心地ぞせむと~「ぞ」は強調の係助詞で、結びの活用語「む」は連体形。
◆いかにめづらしき~「いかに」は程度の強調を示す副詞。「どんなにか、さぞかし…だろう」。
「いかに…推量」の形を取り、この場合は「心地ぞせむ」で、推量の助動詞「む」。