第三章 選挙戦

衆議院の解散から告示までの五日間、武藤はクラウドファンディングで購入した比例ブロックでの街宣車を点検し、印刷が終わって届いたポスターをチェックし文字通り選挙戦の陣頭指揮に当たっていた。

そんな最中にある事件が起きた。それは解散と同時に衆議院議員への鞍替えを模索していた自衛隊出身であの有名政経塾輩出の与党参議院全国比例当選二回で外務政務官と外務副大臣経験者が与党を離党し、武藤の日本民主保守党公認で北海道五区から出馬したいと申し出て、武藤と面談する事になったのだ。

武藤は山脇に同席して貰い面談する事にした。すると山脇とこの元参議院議員宇都宮隆之は面識があり、

「先生、お久しぶりです。その節はお世話になりました」と言って宇都宮が山脇に向かって挨拶し頭を下げた。それに対し山脇は、

「はて、どこぞでご一緒した事がありましたかな?」と身に覚えがない様に答えると、

「はい、〇〇塾時代に特別講師として、外交安全保障の講義を五回程受講させて頂きました」と関係を詳細に伝えると、

「おお、君はあの塾の出身者だったのか? そうか、そうか」と言って納得がいったようだった。ここで武藤が、

「一つだけ、教えて頂ける? 何故北海道五区なの?」と彼が立候補地として挙げた北海道五区の理由を訊ねると、

「北海道五区は札幌市、江別市、恵庭市、千歳市、石狩市等を選挙区に持ち、この選挙区に一番自衛隊関係者が多く住んで居ります、自衛隊出身で参議院全国比例だった私にとっては北海道での大票田でした。

そんな関係から自衛隊出身の私にとっては他の候補者と比較した場合、若干有利かと思いました」と北海道五区から立候補する理由を述べた。

「なるほど、そういう事でしたか」と武藤が納得すると、

「自衛隊には防衛大学校で教授を務められ、持論として自衛隊の国軍への格上げを真正面から主張されて居られる山脇先生のファンも沢山居ります、そんなスケベ根性もなくはありません」と正直に言うと山脇がニヤニヤしながら、

「私の持論を評価してくれるのであれば喜んで利用して貰って構わんよ」と口を挟んだ。

これを聞いた武藤が山脇に向かって、

「そういう事であればこれで決定という事で宜しいですか、先生?」と問い掛け、山脇が頷くと、

「貴方に我が党から北海道五区の公認候補者として衆議院議員選挙で戦って貰う事にします。必ず当選を果たしてください。我が党の公認料は小選挙区公認候補者が二〇〇万円、比例ブロック候補者が一〇〇万円です。私や山脇先生が必死でかき集めた軍資金です。一円も無駄にする事なく有効に使って下さい」と告げた。

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