第三章 選挙戦

実は政治資金に関しては嬉しい誤算が起きていた。日本全国から五,〇〇〇円・一万円というカンパが驚くほど寄せられた。山脇のお陰で自衛隊OBが退職金の一部と言って、一〇〇万円単位での大口献金も集まっていたので、軍資金はあっという間に一〇億円を超えていたのだ。

その為、当初より党公認料を大幅に増額したのである。しかし、それだけ国民有権者の期待が高い事を物語っており、生真面目と言っていい武藤と山脇はその責任の重さを痛感していた。(失敗は許されない! 何としても自衛隊を国軍に格上げし、選挙制度改革を成し遂げなくては)と決意を新たにした。

こうして空白だった北海道ブロックにも北海道五区に小選挙区候補者を擁立できたことから、比例区一一ブロックの内ではなから諦めた四国ブロックを除く、残りのブロックに小選挙区候補者を立てて衆議院選挙を戦う体制を確立する事になった。

そして告示前の準備の中には、政党名の略称の届け出というのもあった。党の正式名称は『日本民主保守党』であるが、それを略して『日民保』と略してもいいし、もっと略して『ミンホ』でも他の政党と判別できると届け出るのである。それ以外の紛らわしい『国保』等は無効票となるのである。

そして告示直前の生放送での党首討論で武藤は居並ぶ党首ではなく、テレビカメラの向こうに居る国民有権者に向けて、こう訴えるのであった。

「この選挙で我が党が連立政権入りできたなら、先に発表済みの人事構想を実現すると共に県議会議員さんや市議会議員さん、村会議員さんに至るまで、ご自身の名前を書いて貰って当選を果たしているのに、政党名を書いて貰ったことで衆議院議員に当選できてしまうような、そして小選挙区で落選しても、党が集めた票で復活当選できる選挙制度を改め、二人~四人程度が当選できる中選挙区制に選挙制度を改めます。

絶対におかしいですよ! 中学や高校の生徒会長選挙でさえきちんと自身の氏名を記載して貰う選挙で選ばれているのに、名前を書いて貰わなくても国会議員になれるなんて」

と有権者国民に分かりやすく訴えた事で、他の野党党首からも、「一考の余地があるかもしれない」という声が上がった。