第一話 ハイティーン・ブギウギ ~青松純平の巻~

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「いるんですよね、あの人」

俺が赤星先輩の顔を二度と見たくないというのにはわけがある。人使いが荒かったからだ。とりわけ副会長は激務だった。

「この書類、校長先生に渡してきて」「PTA会長との連絡、頼んだよ」などは仕方ないとして、「小腹がすいた。菓子パン買ってきて」「ピョンピョンのコンサートいきたいからチケット手に入れてくれ」といった私用は許せなかった。これじゃパシリだ。

一方、赤星先輩は俺を除く四人には優しかった。「それぞれの職務に専念してくれ」そう言ってさりげなく菓子を差し入れしたりする。この扱いの差は何?俺は何度そう思ったことか。

ちなみに、美保は自ら入部。「剣がちょっと心配だから」という幼馴染みゆえの優しさからだった。数学が得意なので会計を担当。居眠りしやすい体質の幸広は、常に手を動かしておいたほうがいいだろうということで書記に。

うんちくを披露したがる光司には、雑務全般を取り仕切る庶務が適任だった。学校が保有する長机とパイプ椅子の総数、講演会で使う垂れ幕の長さ、などのムダ知識は光司にとって好物となった。

生徒会執行部の中で、赤星先輩が最も重要な役職として考えていたのが企画。本来は体育祭や文化祭といったイベントの企画立案が主な仕事である。

だが、なぜだかわからないが【いじめ・校内暴力ゼロ】のマニフェストを掲げていた赤星先輩は、企画の柱を公約実現に据(す)えた。

そこで白羽の矢が立ったのが、明王。中学入学早々、不良のリーダー格だった三年生をボコボコにやっつけ、一躍不良グループのトップに君臨した。

明王を生徒会執行部に入部させた効果はすぐに表れた。赤星先輩が生徒会長を務めた一年間、公約どおりにいじめと校内暴力はゼロだった。

そんな赤星先輩を、先生たちは「椎田中学校創立以来の君子」ともてはやした。けれど、俺にとっては「暴君」だった。

パシリが一年中続いたことに加え、文化祭の催し物として執行部に恥ずかしい命令を下したのだ。それは……アイドルになりきって歌うこと(美保を除く)。

冗談じゃないと思った。男子一同、アイドル好きは否定しないが、それとこれとは別である。

「そんなのやってられるか!」

特に明王はブチ切れていた。それでも最終的に、みなは歌と踊りを全校生徒の前で披露することになった。歌は【ガラスのセブンティーン】。当時人気絶頂のアイドルグループ、SHOW☆TOKU太子の二枚めのシングルだ。

赤星先輩が生徒会長になって一番やりたかったのはこれでは?俺はそう思った。