あなたがいたから

バリ、シンガポール

ラーマとは、サンスクリット語で記載されていて、内容は妻である王妃シータが誘拐され、ラーマ王子がシータを取り戻す為、大軍を率いてラーヴァナ王に挑むという内容である。

荘厳で煌びやかさに彼も私もすっかり見入ってしまった。

まずケチャック・ダンスから始まった。ケチャック・ダンスとは、三、四十人位の上半身裸の男性達が輪になって座り、かがり火を囲んで「チャッ、チャッ、チャッ」という掛け声で、合唱するところから始まり、複雑なリズムと共に炎の明かりの中、力強い合唱が鳴り響き圧倒される。

又レゴン・ラッサムとバロンという舞踊も観た。

レゴン・ラッサムというのは、物語の事で、レゴンと呼ばれる二人の女性が登場し、ガムランという民族音楽の音色に合わせて舞う。それぞれがラッサム王とランケサリ姫の役で物語が始まる。ランケサリ姫は、パンジ王子と婚約していたが、一目惚れしたラッサム王にさらわれ、家に閉じ込められて執拗に求婚される。

これを知った姫の兄でダハ王国の王子は、「姫を開放せよ、さもなくは戦争だ」とラッサム王に迫ったが、好戦的なラッサム王は、受けて立った。戦いに赴いたラッサム王だったが、不意の落馬や死の象徴である〈神の鳥ガルーダ〉に襲われるなど、不吉な出来事に見舞われる。それでもなお戦いに挑んだラッサム王だったが、ダハ王国に敗れて命をおとしてしまうという内容である。

本当に何もかもが、神聖で妖艶であった。バリ島には〈バリヒンドゥ教〉という宗教が根付いていて、祭事には〈バリ舞踊〉はかかせない存在なのだ。そして舞踊の台本の元になっているのが、ラーマヤナだとある。

「すごく煌びやかだったね」と言うと、彼も「そうだね、この様な素敵なバリ舞踊を観る事ができて本当に幸せだよ」と言った。このバリ舞踊を観ている間は、すっかり病気の事など忘れていた。それ程彼も元気であった。                

又バリでは、夕方の海辺でサンセットを楽しんだ。澄んだバリの空気の中、太陽が海に沈む夕日の鮮やかさは、とても綺麗だった。海岸の砂浜にテーブルが置かれ、そこでシーフード中心の好きなものを注文して食べる。

又各テーブルには、チップはいるが、地元の音楽グループの方達が来て、リクエストした曲を奏でてくれるのだ。爽やかな空気、海に沈む夕日、美味しい食事、彼は本当に嬉しそうで、体調も良さそうであった。

〈サテ〉を中心に営業しているバリでも有名な店にも行った。〈サテ〉というのは、鶏や牛の肉、白身魚などを炭火で焼いた串焼き料理である。日本の焼き鳥と似ている。又日本人の方がやっている店にも行って、カレーを食べたりもした。

その他に、〈アタ〉というシダ科植物のツルを使った籠や、民芸品などを売っている店にも立ち寄った。                   

世界遺産ティルタ・ウンプル寺院にも行った。十一世紀頃の、ワルマデア王朝時代に造られた沐浴場があった。身を清めるという意味もあるとか。