挫折

一方、主犯のめまいだけでなく、手足の激痛と強烈な冷えも、私を日常的に苦しめた。

これらの症状のおかげで、今や私は体力・抵抗力が地に落ちた状態になっている。自分の体力・抵抗力に全く自信が持てなくなった。というのは、たかだか、手足の末端の症状によって全身に及ぶノックダウンが引き起こされることになってしまうからだ。

具体的にいうと、一旦、手足首の冷感や痛みが起こると、体が異常に過敏に反応し交感神経の亢進が起こる。手足の局所的な冷えや痛みが、全身の冷えと関節の痛み、悪寒につながって増強されていく。

このままでは「高熱が出るのでは?」と思うほど悪寒が続き気分の悪さは最高潮を迎える。その後、滂沱の汗が全身から一気に吹き出し、全身の冷感、痛み、悪寒は消える。私はこの不快な波が引くまでは、ただ身体を横たえてその不快感にじっと耐えるしかない。

こんな状態が突然起こる。家事などの水仕事でも手先が冷える行為は私にとってはリスクファクターとなる。水泳などはもってのほかだ。もっと困ったことには、映画のシーンで、感動のあまり「ゾクゾク」したことがきっかけで、全身の悪寒、不穏感が誘発されたこともある。大好きな映画さえも命取りになるリスクがあるのだ。 

一体、私の身体はどうなっているのか。困ったことに真夏でもこの状態は起こる。だから猛暑の時期でも私は半袖を着ることができなくなった。裏起毛の長袖の服は年中手放すことができないアイテムになった。

寝る時は、夏でも冬用のパジャマに裏起毛の両肘サポーター、足首サポーター、冬用の靴下をはいて布団に入る。まあ、どうせこれらの症状も相まって、眠れないのだ。すぐに布団から抜け出すことになるのだから、常時、温かい服装でいることは結局、私には合理的なのだ。

何が引き金になってこんな不穏な症状が起こるのかはわからない。

とにかく今までなら、多少、手足の冷えや痛みがあっても仕事などに没頭すればそのうち消えていくような症状としてやり過ごしていた。風邪の引き始めで悪寒があり高熱が出そうな状態であっても、市販薬を2、3回飲めば、それで事足りた。

けれど、今では「あれっ? 少し手首が痛いかな?」と感じるや否や、症状の増悪スピードは加速度的に早まり全身の不快な悪寒につながる。そして私は、あまりの不快さに身動きできなくなるのだ。

つくづく体力というか、抵抗力が無くなったことを痛感せざるを得ない。たかだか、手足首の冷えに怯え、急激に全身に広がる悪寒に対して全神経を注いで耐え忍ばなくてはならないのだ。