Ⅰ.人間の最大の死亡原因は何か?

2 新規の根本療法がなかなか出てこない理由

医療現場の実態

なお、昭和10年代半ばからはもはや八十年余りもの歳月が経過し、この間医学が長足の進歩を遂げたことは間違いのない事実です。しかし、病気の根本原因が詳しく明らかとされることによって根本療法の実施が可能となり、罹患者数が劇的に削減したのは主として伝染病関連のもので、慢性病関連のものは今日に至るまでほとんど減っていないというのが実態であるのです。

以下に例を挙げましょう。

2014年5月14日、私はインターネット上で非常に気になる記事を見かけました。それは、国立循環器病研究センター室長である西村邦宏氏がアメリカの医学誌に掲載した研究結果で、「脳卒中専門医の4割が『燃え尽き症候群』に当たる」という主旨のものです。

今日、医師を志す者の動機として真っ先に挙げられるのは、「病気に苦しむ人間を一人でも少なくすることに自分も貢献したい」というものであろうと思われます。ところが、そのような強い意志や信念を持つ医師たちの多くが脳卒中治療にたずさわる中で燃え尽きているということは、従来の脳卒中に対する医療が満足のゆく治癒成果をあげ得ておらず、また、その罹患者数が非常に多くて(近年の我が国の脳卒中罹患者数は年間120万人ほどに達している)、医師が多忙を極めているということ故だと推察されます(但し脳卒中は、統計成績のグラフを見る限りは、その死亡率がほとんど漸増傾向を示していない病気の一つである。

ことに、ここ半世紀近くは漸減傾向にあることが知られている。しかしその実、罹患者数はむしろかなり増加しているというのが実態である)。そこで、このような事態を生んだことの主たる理由はなぜかを考察すると、その最大原因はなんと言っても、現代医学において今なお脳卒中の根本原因が未解明であるからに他ならないと結論付けることができます。

生活習慣を決定するのはあなた自身

医学界において長年、「慢性病」とも「成人病」とも呼ばれ続けてきた諸病の名前が、近年「生活習慣病」と改称されたことは、皆さんもご承知のことでしょう。さて、名前というものは、時に思いがけない効果や影響を生むものです。「慢性病」は、その名称からは、症状の発生が急激でなく、長期間を経た後に罹患するに至る病気であるということはわかっても、その発症原因に関してほとんどなんの情報も与えるものではありませんでした。

ところが、その呼称が「生活習慣病」に変わったということになりますと、「生活習慣の良し悪しがこれらの病気発症の主要な原因なのだろう」ということが誰にでもおおよそわかることになります。したがって、いかなる生活習慣がこの病気に罹患しやすくさせるものであるのか等を究明すれば、遥かに優れた予防、治癒の成果が得られることとなるわけです。

さて、ここで皆さんにとくとお考えいただきたいのですが、そもそも“生活習慣”は各個々人が主人公となって決定される領域の事柄です。ということは、病気に罹患するか否かの決定権を持つのは誰あろう、あなた自身であるわけなのです。

病気対策として予防が大事だということはご承知のとおりですが、このことは、戦うべき相手の正体、ことにその根本原因に関する情報が詳しくわかればわかるほど、満足のゆく成果が期待できることであるのです。逆に言えば、病気発症に関する情報が十分得られていない状態にあっては、“予防医学”も実質的成果を十分あげることは期待できないのです。したがって、個々人が生活習慣病の根本原因に関して、“なるほど!”と得心のいくような正確な知識を、ぜひとも十分習得していただきたいと私は強く願っています。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『殺人うんこ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。