Ⅲ.心臓発作と脳溢血から生命を守るために

2 原因物質特定への道

両発作の病型の差異はなぜ生じるのか

ところで、私が著した『医療革命』の読者の中に、「酸性腐敗便と虚血性心疾患(冠状動脈血管の閉塞や狭窄などによって心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称。狭心症や心筋梗塞がこれに含まれる)との関係、および、酸性腐敗便と虚血性脳血管疾患(脳梗塞)との関係はどういうものか」と質問されてきた人がいました。

その人は、私の著書を読んで、「酸性腐敗便は血管を破綻させる原因となるだけのもので、虚血性心疾患や虚血性脳血管疾患の原因ではない」というふうに理解されたらしいのです。一般の人の多くは、脳溢血は脳の血管が破れて出血する病気なのだから、非常に高い血圧が脳血管に加わって、それに耐え切れずに血管が破れるというメカニズムでもっぱら発症する病気だと思い込んでいるようです。

確かに、脳溢血の際には測定不能なほどの超高血圧が発生します。したがって、脳血管破綻の原因はこの超高血圧の発生によるものであると判断されやすいのでしょう。しかし、脳溢血で脳血管が破綻を来して出血に至るメカニズムの大半は、次に示すようなものです。

脳溢血発症の際には、脳血管の一部にタンパク性アミン類が強く作用して極めて激しい血管の痙攣を生じ、その部位の血行が一時的に途絶えます。その結果、痙攣部位に続く血行下流部が必然的に高度の酸素欠乏状態に陥ることとなり、その酸素欠乏状態が一定時間以上継続した場合には、その酸欠部位の血管壁の細胞が壊死することになるのです。

その後さらに時間が経過しますと、やがて血管痙攣が収まってきます。そして、血行が再開された際には、細胞壊死を生じた血管部は非常に脆くなっているため、普段とさほど変わらない血圧がかかっただけでも破綻を来し、そこから出血をすることとなるのです。