Ⅲ.心臓発作と脳溢血から生命を守るために

2 原因物質特定への道

両発作の病型の差異はなぜ生じるのか

ところで私は、酸性腐敗便の産出・吸収という同一の原因であるにもかかわらず、結果として発症する病型が、ある場合には心臓発作となり、また、ある場合には脳卒中になるという大きな差異が生じるのはなぜかということについては、ここまで全く触れてきませんでした。

その理由は、本書の内容は心臓発作および脳卒中の根本原因の究明という非常に堅いもので、しかも、従来の知識とは大幅に異なる、皆さんにとっては初耳の話です。したがって、できるだけ頭の混乱が生じることを避けたいと私は考え、ここまでこのことには触れずにきたのです。

しかし、本書においてこのことを説明しないまま素どおりするわけにはもちろんいきませんので、この差異がなぜ生じるのかということについてここで詳しく触れておきたいと思います。

そもそも両発作はともに、血管系の障害に起因する範疇の病気、すなわち「循環器系疾患」と呼ばれる類のものです。詳述する前にまず、酸性腐敗便と両発作発症との関係について以下に整理してみましょう。

まず、酸性腐敗便中の水分の(直)腸壁からの血液中への吸収によって生じるのは、タンパク性アミン類の持つ激烈な血管収縮・痙攣作用および、組織傷害作用によって引き起こされる高度の血行障害です。そこで、このような強力な血行障害発生時に全身に血液を送り届けるべく心臓が拍動しようとすると、心臓は平時よりも遥かに大きな血液拍出力を発揮しなければならないことに当然なるわけです。

そしてもちろん、このような際には、心臓自体を養うための血管である冠状動脈血管にも激烈な収縮と痙攣による高度の血行障害が発生するため、心臓の筋肉への酸素および栄養素の供給に支障が生じ、心臓は強力な血液拍出力を発揮することが困難になってくるのです。