第一章 新しい家族

引っ越し

僕と由美は自分の物を段ボールにしまって、お父さんとお母さんの物はお姉ちゃんが休みの日に僕たちと話しながら片付けた。由美がそばでお父さんとお母さんの物をお姉ちゃんに説明し、由美にわからないものは僕に訊いた。僕は訊かれたこと以外にはしゃべらなかったし、そばにも行かなかった。

いろんなことを思い出して泣きそうになる。お姉ちゃんはほとんどの物を捨てずに段ボールに詰めた。お父さんたちの物を捨ててしまえばもっと寂しくなっただろうとあとで思った。お父さんとお母さんの物をしまってくれたから、一緒に引っ越しするような気がしていた。

おばあちゃんが山梨の病院から横浜の病院に移った日、山梨まで迎えに行った昭二兄ちゃんから、病院に着いたと電話があって、片付けを中断して三人で病院に行った。僕たちがおばあちゃんに会うのは事故のとき以来だ。おばあちゃんの両足にはまだギプスが着いていて、胸にも包帯が巻かれていた。切られた髪の毛が伸びかかっていて、おばあちゃんではないみたいで、由美は千恵姉ちゃんにつかまって近づこうとしなかった。

おばあちゃんは僕たちを見て、

「全然お見舞いに来てくれなかったんだね」

と、ぼそっと言ったから、お姉ちゃんが何か言おうとしたら、ベッドのそばにいたお祖父ちゃんが、遮るように

「だから言ったろう。こっちはこっちで大変だったんだって」

あきれたように言って、僕たちの方を見ながら

「こいつ、頭を打ってから性格が変になっちまったみてえだ」

と言い、自分の白髪頭をこすりながら

「参ったよ」

とつぶやいた。おばあちゃんは不満そうに

「ドライブなんて行かなきゃよかったよ」

ぼそっとつぶやいた。

「いい加減にしろ。お前が行くって言ったんじゃねえか」

お祖父ちゃんはまた遮って怒った。おばあちゃんは、たまにお店に行ったとき、にこにこしながら声をかけてくれた。今日は知らないおばあさんみたいですごく変だった。

引っ越しの日、平井のおじさんがトラックでお姉ちゃんたちの荷物を運んでから、僕たちの家の荷物を積みに来た。近所のおじさんやおばさんたちが大勢で手伝ってくれて、すぐに積み終わってしまった。たくさんの大人たちが僕と由美のために働いてくれていることにすごく悪いなあと思って、一生懸命荷物運びを手伝った。