Ⅰ.人間の最大の死亡原因は何か?

2 新規の根本療法がなかなか出てこない理由

医療現場の実態

病気の治療方法は、対症療法と根本療法の二つに分けられます。そして、数多種類のある病気について、そのごく一部しか根本原因が解明できていない現在、残念ながらその医療は、未だ対症療法全盛の時代にあると言っても過言ではない状態にあります。

対症療法は、その症状の緩和を主たる目的として行われる治療方法ですから、なかなか速やか且つ十分な治癒成果をあげることができません。あれこれ言うまでもなく、病気を治すに際して最も王道と言い得るのは根本療法なのです。

本書の冒頭で、「この世はすべて因果で律せられている」と述べましたが、その病気発症の根本原因が明らかになるということは、病気になる前からあらかじめ、病気そのものが有する罠の存在や、さらにはそのメカニズムについての詳細がわかることを意味します。もちろん、それぞれの病気には様々な原因因子が関わっているので、たとえ根本原因が明らかになっても、なかなか思いどおりの結果を望むことは困難であろうと考えられますが、根本原因が明らかにならないときに比べれば、段違いに差異のある治癒成果が得られることは間違いないのです。

ことに病気の予防に関しては、その根本原因が明らかになると、極めて優れた成果の獲得が可能となります。それこそ、医療が別次元のものとなるほどの変化が期待できるのです。

このように言うと、皆さんは様々な病気に対してもっともっと根本療法が行えるようになれば良いのにと感じることでしょう。ところが現実はそうなってはおりません。その理由はなぜなのでしょうか。

その原因の一つは、研究者の世界においては成果主義が全盛であるからです。すなわち、ある程度の期間内でそれなりの成果をあげることができないと、学者としての能力が疑われ、科学者としての社会的な評価を得ることができないのです。この点に関しては、世の中の他分野と全く同様であるのです。

ところが、主要死亡原因疾患である慢性病の諸病は、その発症に数年から数十年という長い歳月がかかり、その長い期間において、極めて数多くの様々な原因因子の関与が窺われます。そのような性質を有する病気について、さほど長くない期間の中で、「これこそがその根本原因だ」と特定して明らかにすることは非常に難しいのです。

成果をあげるのに非常に時間がかかるにもかかわらず、成果があがらないと研究費も集まらなくなります。さらに、研究費が大幅にカットされたり研究者が左遷されたりした場合には、なおさら成果をあげることが難しくなるという悪循環に陥っていくこととなります。

また、研究にははやりすたりがあって、はやりの研究テーマは世間の注目が集まるので研究費用も集まりやすく、また、そのようなはやりの研究を行いたいと思う者も数多く、したがって、スタッフもすぐにそろって、研究を行う環境が整いやすいのです。人々は、数多くの人命を奪う原因となっている疾患別死亡率順位の上位にある慢性諸病の根本原因の早期の解明を望んでいるのに、研究の現場では一般の人々が強く望む種類の研究が必ずしも熱心に行われているわけではないというのが実状なのです。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『殺人うんこ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。