第3章 情報認知

21 レンズで情報量をコントロールする

第16回でレンズの特性について説明をしました。レンズ選択は焦点距離と被写界深度(ボケ量)の設定で画面内の情報密度にも大きく影響を与え、具体性と抽象性をコントロールすることができます。

焦点距離による情報量のコントロール

〈広角レンズ〉
・背景の映る範囲が広くなる
・手前ほど大きく映る

〈望遠レンズ〉
・背景の映る範囲が狭くなる
・手前と奥の大きさが同じになる

写真を拡大 [写真1]焦点距離の違いによって情報量をコントロールする

被写界深度(ボケ量)による情報量のコントロール

〈パンフォーカス〉
背景にもピントがしっかり合っているため、情報量は多いが被写体は際立たない

〈シャローフォーカス〉
背景がボケることにより、情報量は減るが被写体は際立つレンズで情報量をコントロール

写真を拡大 [写真2]被写界深度の違いによって情報量をコントロールする

22 具体表現と抽象表現の併用

疑問感と納得感を両立させる

理想的な情報認知は「どういうことだろう?」と思わせる疑問感と「なるほど!」と思わせる納得感によって成立します。

疑問感(抽象表現)だけではストレスが溜まってしまい、納得感(具体表現)だけでは思考を喚起させられません。

抽象表現と具体表現を交互に見せることで疑問感と納得感を両方感じさせ、視聴者に深い理解を促すことができるのです。

[図1]抽象表現と具体表現を交互に見せる

抽象表現には地頭のよさが必要

すべての世界に共通していることですが、抽象思考は具体思考の完全上位です。なぜならば抽象思考は、物事の本質を見極めなければならないため、ある程度の地頭力が必要だからです。

アートな思考で作品を作っている抽象世界のクリエイターと機材操作や実用的ノウハウを優先する具体世界のクリエイターでは見ている景色が違うため、おおむね話が噛み合いません。

抽象世界の人間は優れた具体表現ができますが、具体世界の人間は優れた抽象表現はできません(抽象表現っぽいものは作れます)。

ただ抽象表現は、はまりすぎると難解な世界に突入してしまい、戻ってこられなくなる場合があります。

どちらか一方ではなく、常に抽象と具体を往復しながら表現していくことが大切です。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。