ともに永遠に

夫と出会った当時は嫌いだし苦手なタイプだった。異性に対しても気軽さを越えて、わきまえることもない男が大嫌いだった。第一印象は、ものすごく悪い。関わるとバカがうつると思った。大嫌いな人だった。大男で186センチもあり、見た目もチャラくて大嫌い。恋をしたのは、何故だろう。

漠然としているかもしれないが、この人には人情があったから。私にとってはヒーローだから。辛い過去の恋愛から切り離してくれたからだと思う。重たいくらい好きになると献身的に尽くしてしまいがちな私。前の彼に正直たくさん尽くし続けてしまっていた。だが前の彼は結婚を申し込まれた時に無職。婚姻届を書くよう促された時もまだ無職。無職なことを実母の前では働いていることにしてくれと言うような人だった。実母は騙されてしまって結局別れ際には、

「なんで別れようとしているの……」

と泣き崩れたほど、前の彼を推していた。前の彼が追いかけてくるのは私を好きだからとは思えず未来への不安が募った。この人に人生を捧げたら駄目だと感じて別れを告げたというエピソードがきっと夫との急展開、結婚に至るきっかけだ。

前の彼と夫は男性グループの仲間だ。全然顔を出さなくなった私に対して、夫から、連絡がきた。チャンスだった。前の彼と別れたいがために、ひどく仲間をののしるような嫌気がさすような言い方をしてしまえばきっと理由を言わなくても、最低な女として終わるだろうと考えた。もちろん、

「お前なんか要らん女や」

と夫から言われ、周りからも嫌われようという作戦は成功したかに見えた。早く前の彼と別れたかったから仲間に悪口を言えば、仲間の肩を持つだろうという策を立て上手く行ったはずだった。

しばらく経ち、また夫から、連絡が来た。嫌われようとしてることを見透かされていた。いつも仲良く仲間に入れてくれていたからこそ察したのかもしれない。別れたい理由を簡潔に吐かされた。未来への不安も理解してくれた。何度目か別れを告げた、今なら傷害未遂になるのだけど、命の危険にさらされたとき、夫は駆けつけてくれた。

夫はその後帰宅し、両家の話し合いになり、ようやく別れてもらえた。もう仲間含め、会うことはないだろうと思っていた。なのに、夫の友人から連絡が来た……。その夜、友人は夫を連れてアパートにまで話をしに来た。三人で話し合った。あの日からの話と、お付き合いの話だった。でももし付き合うとなると夫は責任をとるような気がしていた。仲間だった前の彼の隣にいた人だから。結論は、その日のうちには出なかった。

時間をかけて、私は、噛み砕いていった。逃れられなかったかもしれない現実から助けてくれた人でもある。口を大きく開けて無邪気に笑う姿、彼がいたら周りが明るくなる空間を思い出す。気を回せる性格を新発見。楽しい時間を築けるのかな。仲間を失わせてしまいそうな不安で、正直どうしたらいいかわからなかった。今まで友人としてしか見ていなかった人に付いていく勇気がなくて、優柔不断だった。でも頼りがいがあり優しい包容力には負けた。

この人とやっぱり恋に落ちたいと感じた。恋をしたい、という気持ちなのか。この人の優しさに気づきだして心が締めつけられる恋になる瞬間は、苦しくて、信じられないほど、あんなに嫌いだった人をゆっくり好きになっていく気持ちが芽生えていた。