瘀血とは何か

()(けつ)とは、血液循環不良が原因でおこる、非生理的血液の渋滞の総称として理解されています。

西洋医学では、この()(けつ)の概念がなく対症療法になりがちなため、未病(みびょう)の段階での早期治療ができにくくなっていました。参照文献の長野潔先生著「鍼灸臨床 わが三十年の軌跡」の57頁を中心とする血流促進処置法に詳述されていますので、是非参照して下さい(以下、軌跡と略称します)。

ここでは、長野式治療法を中心としつつ、私自身の考えと施術法を述べてみます。()(けつ)の原因と考えられるものには、以下があります。そして、それらは重なり合って現れる場合も多いのです。

・内因つまりストレスによる、自律神経失調やホルモン失調を原因とする血管収縮。

・外因つまり冷えの影響による、毛細血管の血流障害。

・ 不内外因つまり打撲や外傷等の影響による、血管内の微小血栓による血流渋滞。

()(けつ)が女性に多く見られる要因は、女性は出産に備えて骨盤がタライ型になっておりバケツ型の男性と比べて骨盤内臓器が下垂しやすくなっていることや、腹筋が比較的弱く内臓全体も下垂しやすくなっていること、皮下脂肪が比較的多いことで、冷えやすくなっていることなどが重なっています。このことにより男性より()(けつ)が多く出やすいと考えられます。

男女を問わず左下腹部に()(けつ)が多く見られるのは、膨大な血管網がある消化管は、胃の位置関係から、体の中心から、やや左寄りにあることによる血液流量の差があると考えられます。つまり、血管網の非対称性が原因だと考えられます。

()(けつ)が発生しやすく、触診しやすい部位は、左大巨穴付近や左右の恥骨上角付近や大腸兪穴付近や仙骨辺縁付近です。()(けつ)が原因でおきる主な疾患は、以下のものです。

・循環器系では、高血圧症 動脈硬化 狭心症 心筋梗塞 脳血管障害 認知症

・消化器系では、胃

・十二指腸潰瘍 胃

・大腸ポリープ 痔疾

・皮膚科系では、アトピー性皮膚炎 じんましん 薬疹

・ その他、子宮内膜症などを原因とする月経痛や、リウマチなどの自己免疫疾患