「ピピーッ」主審のホイッスルが鳴った。試合は難波工大のサーブで始まる。

バックの三回生榊原が腰をしっかり沈めてレシーブ。うん、絶好のパスだ。

センターの二回生島野がサイン通りBクイックに入ってくる。よし、ええタイミングやぞ。でも今日の一発目は相国寺や。ボールが純平の手を離れた。コートの外に開き、しっかり助走を取った相国寺が跳躍姿勢に入る。

決めろ、相国寺! 難波工大を驚かせてやれ!

相国寺の体が上昇していく。次の瞬間には、いつもと違う高さとパワーのスパイクが相手コートに炸裂するはずだ。純平は期待を籠めて自分が上げたトスを追った。だが、相国寺がボールを叩く音は聞こえなかった。跳び上がった相国寺の動きは空中で不意に止まり、そのまま不自然な体勢で落下したのだ。

体育館には、ボールの代わりに相国寺の全身がフロアに叩きつけられた音が響いた。

「相国寺!」

駆け寄った純平が抱き起こそうとすると、相国寺の首は後ろにがくんと倒れた。試合は三対〇のストレートで敗れた。開始直後にああいう形で絶対的エースを失ったチームに、まともに戦えというほうが無理だった。

救急車で搬送された相国寺には、監督とマネジャーが病院まで付き添った。主将の純平は、コートに残って負け試合を指揮するしかなかった。運ばれた病院で、相国寺の死亡が確認された。一部昇格の夢が閉ざされた、その何倍もの衝撃がチームを襲った。

もちろん迂闊に口に出すことはできなかったが、純平と城戸は真っ先にあの怪しげな薬の副作用を疑った。だが解剖所見では、血液にも血管にも、その他の臓器にも、特に異常は見られなかったそうである。彼の心臓が突然活動を停止した理由は、医学では解明できなかったのである。