なるほどと思いながらマンション建設の計画から、販売までの見事なシステムに舌を巻く。購入する者からの借り入れを前提とした資金調達で建物が建てられ、販売される。ビジネスとして様々な雇用も発生する。新たな価値が創出され、そして経済が回っていく。大きなお金の流れの中で価値が蓄積され、経済が動いていることをまざまざと感じさせられた。

ただ、大きな金額の借り入れに伴う実質的な利益の確保に35年の時間を要することを考えると、システムの見事さに見合うだけの旨みを感じることはできなかった。そもそも35年後の76歳までと、それ以降に残された時間を考え合わせると、マンション所有の意味は何なのか。目的自体が霞んでしまった。

しかし、ものは考えようである。退職までの間に、一体どれだけの借入れへの返済が完了しているのか。村上氏に計算してもらった。退職時、残債700万ほど。であれば残債を退職金で一括返済すれば、その後は、家賃がそのまま収入となるのである。

700万円が月々5万5千円ほどの利益を生み出すのである。単純計算で利回りは約9・4%になる。現在、普通預金金利が0・001%であることを考えれば、夢のような数字である。ただし定年まで勤め上げ、無事退職金を貰えたらという前提はある。

しかし、「もしも」のリスクばかりを考えていても話は好転しない。ホジティブに前に進むからこそ、その先の道は開けていくのである。借入れのための担保も特に必要ないとのことである。現在の職業とそこで得られる収入で審査はパスするらしい。

第5話 マンション経営で本当に資産形成できるのか!?

これだけを考えると、契約しない理由はない。しかし、投資マンションのリスクを改めて確認すると、いろいろと理解しておかなければならないことがあった。その最大リスクは、借り手のいない空室リスクである。家賃収入を返済に当てている以上、借り手がいなければ、その間は自己資金からの持ち出しである。

返済を月5万円とした時、ひと月で5万円。ふた月にまたがれば10万円になる。いくら安定的な収入があっても、長期になれば持ちこたえることは現実的には無理である。また、入居者の転居に伴う壁紙の張替えや清掃等の原状回復にかかる費用の他、エアコンや給湯器などの付帯設備が故障した場合の修理や買換えの費用もオーナーが負担するということである。

あまりにも多い費用負担に、従来のポジティブさも吹き飛んでいった。更には、15年から20年に1度の大規模修繕にかかる費用も月々積み立てていかなければならないとのこと。その他にも、賃貸管理や建物管理を請け負う管理会社への月々の支払いも発生する。つまりは投資マンションを所有する上で発生する経費は多岐にわたり、その多さに驚いてしまった。

 

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