その後も何人かの来賓から祝辞が述べられ、乾杯の後、食事へと時間が過ぎて行った。司会者が、座が静まり返るのを待って、梅澤を紹介した。

「宴もたけなわではございますが、ここで梅澤先生から本日ご列席頂きました皆様にお礼のご挨拶がございます」

梅澤は席から立ち上がり、ステージの中央へと進んだ。軽く咳払いをして、気持ちを落ち着かせた。会場の一人一人にお礼を伝えるように話し始めた。

「自分を花に例えますと、何だろう? ……セリ、ナズナ、ゴギョウにハコベ、ホトケノザ、スズナ、スズシロというのは春の七草ですが、自分は雑草だと思っています。お世話になった先生方は、自分を雑草だと思っていながら種を植え、雑草と知っていながら肥料を与え水を注ぎ、雑草だと解っていながらプランターに植え替えて綺麗に整えて頂いたと思っています」

少し気持ちが落ち着いてくると一人一人の顔が良く見えてきた。実際に何人もと目があった。誰もが暖かい眼差しを送ってくれている。そして、何かを梅澤に期待している目でもあった。梅澤は、その期待に応えるように京帝時代の居村先生とのエピソードを話し始めた。

「私は、居村先生に憧れて第二内科に入局しました。当時の第二内科では、忘年会が大変盛大で、200人位のスタッフが出席していました。そして、十幾つある研究室が対抗で隠し芸を披露し順位を争っていました。一カ月前から研究室では忘年会の練習を始めます。外来診療や病棟業務は、ほとんどやりません」

会場から大きな笑いが起こった。当時を知っている者は、忘年会を思い出していた。