梅澤の研究室では、テレビで流行っていた「悩み相談室」という番組をパロディー化した寸劇をやった。梅澤は、コメンテーターの一人に扮して、3人の相談者の悩みにコメントをする役柄である。1人目の相談者には、田中角栄総理のモノマネで回答した。2人目には作家の野坂昭如氏のモノマネで答えた。3人目には、漫才師の人生幸朗師匠のモノマネで回答した。

「その甲斐あってか、うちの研究室が優勝しました。そして、自分は最優秀個人賞に選ばれました」

会場から大きな拍手が沸き起こった。

「それで、壇上に呼ばれて、居村先生から最優秀個人賞の賞状と記念品を受け取ったんです。その時に、僕、舞い上がっちゃって、『これでもう学位なんか要らない!』って叫んだんです。居村先生の前で……」

再び、大きな笑いが起こった。

「留学から帰ってきて、博士号の学位を申請しました。博士号の証書って、京帝大総長から直々に受け取るんですね。その時、居村先生は京帝大総長になっておられて、僕、証書もらいに壇上に上がったら、居村先生が学位証書を両手に持って、僕の顔を見てにやっと笑われて、僕に手渡さずに証書を引こうとされるんです。僕、急いで居村先生から証書を奪い取りました。本当に居村先生の記憶力は素晴らしいです」

会場の笑いが最高潮に達した。笑いが収まるのを待って梅澤は挨拶を締めくくった。

「私は、金沢で自分にできる最高の医療を行おうと思います。自分にできる最高の研究を続けようと思います。そして、それができる最高の講座を作ろうと思います。そのプロトタイプ・原型になるのは、やはり京帝大学臨床免疫学講座です。どうぞ、京帝大学臨床免疫学講座が日本一の講座になるように、医局の皆様頑張って下さい。そして、今日、このような立派な会を準備していただいてありがとうございました」

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