「その為のたたき台として、嘗てお父様がシミュレーションしてお作りになったあの幻の中選挙区制案を素に直近の国政調査結果などを踏まえ、政府提案という形で新しい中選挙区制案を貴方には総務省の副大臣ないし政務官として入閣し、中選挙区制案作成の中心人物として力を貸して欲しいの、如何?……私達に力を貸して貰える?」と問い掛けると、

「私は父の志を継いで、選挙期間中は一貫して選挙制度改革を訴えてきました。その中で訴えた事が中選挙区制の復活です。実際に小選挙区比例代表制の下では無所属新人候補は圧倒的に不利な扱いを受けます。政見放送にも出演できない他、法定ビラやポスターで公認候補と二万枚の差別を受け、街宣車も政党の街宣車が使えない為、政党公認候補が事実上二台の街宣車で戦えるのに対して、無所属候補は一台だけです。

そして何といっても最大の不公平な事が今回もそうだったんですが私の相手候補は、私の得票に対して一三、七〇〇票ほど票差があったのですが、重複立候補者であった為、比例区で復活当選されました。惜敗率は八〇%です。しかし、その前の選挙では私はその相手候補に三、五〇〇票差で敗れ、惜敗率で言えば九四%にもかかわらず無所属だったので重複立候補できませんから落選の憂き目に遭い四年間の浪人生活を過ごしました。私は、今の選挙制度の矛盾と理不尽さをこの身で体験しました」と話した。

「そう、お若いのに大変な苦労をされたのね。私も今の選挙制度の中の『惜敗率』には大いに疑問を感じているの。純粋に日本語の意味からしたなら惜敗と言えるのは相手候補の得票が七万票だったならその九〇%六三、〇〇〇票まででしょう? 百歩譲っても五九、五〇〇票の八五%までが惜敗として認められるかなと思えるの、

直近の総選挙では、惜敗率六六%で当選できた議員が誕生しているけど、七万票で当選した候補に対して四万六千票で同じ当選者となるなんて理不尽としか言えない。せめて惜敗率九〇%以下は当選無効とすべきだと思う」と武藤が惜敗率について語ると、

「その通りです! 経験者として申し上げさせて頂ければ、武藤先生の仰るように惜敗率九〇%以下を当選無効とし、逆に無所属候補であっても九〇%以上の得票率であったなら当選可能とする方が『死票』を大幅に減らす事ができます」と力強く経験を踏まえて語った。

「賛成!」と武藤が拍手しながら笑顔で答えた。こうして武藤は一一ブロックの衆議院議員比例区の内の東海ブロックと中国ブロックに小選挙区候補者を確保した。

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