動き出したフィジカルインターネット構想の具現化

モントルイユ教授らの提唱によれば、フィジカルインターネットとは、データ送信を行う際のデジタルインターネットのしくみを物流・ロジスティクス領域に概念的に転用していくという考え方である。

デジタルインターネットでは張り巡らされたウェブ状のネットワークを活用して送信側が受信側にパケット単位で情報が伝達される。

この発想や概念を物流・ロジスティクス領域にも当てはめ、コンテナやパレットを物的パケット単位(かたまり)に見立てて、標準化された倉庫などの拠点(ノード)と緻密な輸送ルート(リンク)を設定することで最適化を実現するというものである。倉庫や輸送ルートはシェアリングできるようにすることで共通のインフラとして広く開放することになる。

我が国におけるフィジカルインターネットの導入については、「SIPスマート物流サービスの取組み」(国土交通省物流政策検討会資料)のなかでも触れられている。

すなわち現行のサプライチェーンでは製造業、卸売業、小売業のデータの多くが未連携で、生産予測困難、伝票不統一、不動在庫、仕入れ予測困難、作業員・販売員不足などの課題が山積されていることが指摘され、省力化・自動化に資する自動データ収集技術の開発を念頭に荷台情報、作業情報、重量・採寸情報などの収集技術や、「SIPスマート物流サービス」による物流・商流データ基盤の構築が重要な研究開発項目となっている。

作業生産性の向上、トラック積載率向上、在庫量削減、トレーシング強化が達成すべき目標としてあげられているのである。

そして、問題解決の最終目標として、Society5.0の具現化を目指すためのビッグワードとして、物流・商流のDXとのリンクもふまえたサスティナブル(持続可能)な物流・商流と並んで、フィジカルインターネットにも大きな注目が集まっている。

フィジカルインターネット構想が現実のものとなれば、これまで以上に物流は身近なものになるだろう。

「打ち合わせはデジタルインターネットを介してオンラインで、サンプルや商品はフィジカルインターネット経由で、別送する」というビジネスパーソンのライフスタイルが一挙に一般化していくことになるだろう。