1 情報革命からシン・物流革命へ

本章では情報革命がサプライチェーンに大きな影響を及ぼし、その結果、物流にも革命とも呼べる大変化が発生していることについて解説する。ビッグデータ、IoT、AIなどと物流・ロジスティクス領域とのリンクによるスマート物流の展開や物流・商流デジタルプラットフォームの構築、コロナ禍以降に向けて注目される物流関連のビジネスモデルなどについても言及する。

[図1]物流DXネットワークの構築とシン・物流革命

ドラッカーが予言した未来

本書の筆者である鈴木と中村は物流・ロジスティクスの専門家であるが、昨今は物流・ロジスティクスという言葉がすっかり一般にも定着してしまい、うれしい反面、大きな戸惑いも感じている。

物流・ロジスティクス領域は、その重要性とは裏腹にどちらかというと「縁の下の力持ち」として扱われ、企業経営やビジネスの花形は企画・開発であったり、マーケティングであったり、営業であったりしてきた。

しかし、2000年代の初頭あたりから話が変わってきた。その大きな理由は「情報通信の進歩」である。

たとえば、在庫管理は理論上、どのように対応すればよいかということがわかっていても、莫大なアイテム数について、入出荷の記録や安全在庫量の計算などを手計算で行っていては、一区切りできるまでに日が暮れてしまう。しかし、表計算ソフトを使えば、そうした非効率から解放される。専用の在庫管理ソフトが登場し、それまで夢のように考えられてきた倉庫管理が手に取るようにできることになったのである。

実際、物流はそうした情報通信やITの進歩で飛躍的に進歩した。

一例をあげると、物流センターや倉庫の管理に欠かせないソフトウェアに「WMS」(Warehouse Management System:倉庫管理システム)がある。物流センターや倉庫内での作業進捗や在庫状況を管理するツールだが、いまやほとんどの倉庫に導入されている。膨大な入荷情報や出荷依頼、保管されている商品在庫の管理など、とても手作業では行えないような数的処理を迅速に行うことができる。

しかし、WMSが本格的に導入され始めたのは21世紀になってからで、1980年代から1990年代にかけての「バブル期」にはほとんどの倉庫で、手作業で処理されていたか、あまりの作業量にその手作業の処理さえ放置されていたかのどちらかという状態だった。