運動会は全くやる気にならなかった。

「中学最後の運動会だというのに覇気が感じられないぞ。もっとしっかりやれ」

体育の先生がどんなに檄を飛ばしても、有紀が一生懸命応援してくれても一〇〇メートルを走る気力が湧かなかった。結果は惨敗だった。

部活を引退した三年生は本格的に受験モードに入る。しかし、俺は気持ちの整理がつかないまま、ずるずると期末テストを迎えてしまった。

「柘植くん、全然勉強してないでしょ。大丈夫なの」

「どうとでもなるし、なるようにしかならないよ」

「そんなこと言って。ねえ、今から図書館に行って一緒に勉強しようよ」

「塾があるんだろう。無理しなくていいよ」

投げ遣りでぶっきらぼうな物言いに腹を立てたのか、黙り込んでしまった有紀は不意に走り出し、歩行者用信号機の点滅中に横断歩道を渡ってしまった。呆気に取られる俺を置き去りに、少し先の角を曲がって消えた有紀は振り返りもしなかった。翻ったスカートの裾が有紀の不満と憤りを代弁しているように見えた。