空き家を未然に防ぐには?

理想的なのは、まだ老親がお元気である間に、家族で実家の行く末を話し合っておくことです。

「将来、その家に住みたい子ども(相続人)はいるのか?」「もし誰も住まないのであれば、どうするか?」「なるべくなら土地を守ってほしい、といった気持ちは老親にはないか?」「老親の介護費用の捻出に、実家の売却は想定するべきか」

このようなことを家族で話し合い、お互いの考えや立場を明確にしておくのです。特に、老親がお元気である間に話し合っておくことが重要です。なぜなら、老親がお元気であれば、将来に向けて様々な対策を検討することができるからです。

それではどのような対策が有効なのでしょうか。ここでは具体的に3つご紹介させていただきます。

①家族信託 

実家が放置空き家になってしまうきっかけとして、老親が施設に入所するタイミングが考えられます。施設に入所するギリギリまでは、老親が自分の家に住んでいたい。施設に入所してからは、管理負担や介護費用捻出などの観点から、実家の売却を適切な時期に行いたい。このようなケースはよく見受けられます。

このときに問題となりうるのが、いざ実家を売却しようとしたときに、所有者である老親の認知症が進行してしまっている、という状況です。

不動産の売主は、あくまでも所有者である老親になります。したがって、老親の判断能力が衰えていると、そもそも売却という行為自体ができないのです。かといって、空いた実家に誰かが住むわけでもない。結果として、売れない・住まないという状況下で、空き家の放置が進んでいくというパターンです。

このような「実家凍結問題」を回避する手段として有効なのが「家族信託」です。信託とは、財産管理に関する契約(信託契約)です。特に信頼できる家族との間で結ぶ信託契約のことを「家族信託」と呼んでいます。信託契約の基本的な当事者は、次の通りです。

委託者:委託者とは、信託する財産(実家)の元々の所有者であり、信託契約によって財産を託す人のことをいいます。このケースでは、老親を指します。

受託者:受託者とは、委託者から財産(実家)の管理・処分を託された人のことをいいます。このケースでは、老親の子どもなどが考えられます。

受益者:受益者とは、信託した財産から得られる利益(売却代金など)を受ける人のことをいいます。このケースでは、通常は老親となります。

信託契約を結び、実家の処分権限を受託者(子ども)に事前に授けておくことによって、以後は委託者(老親)の判断能力の有無に関わらず、受託者(子ども)が自身の判断において実家の売却を進めることが可能になります。「実家凍結問題」を回避するための非常に有効な仕組みです。