【前回の記事を読む】遺書があっても揉めてしまう…気を付けるべき「遺留分」とは?

第二章 紛争ケースから学ぶ! 『相続』のポイント

兄弟姉妹が相続人のケース

[図1]次郎さん一家の相続

登場人物:次郎さん家族次郎さん夫婦には、子どもはおらず、次郎さんの妻は、3年前に他界しました。

次郎さんは、現在施設に入所しており、身の回りの世話は、一番下の弟六郎夫婦が担ってくれていました。次郎さんとしては、自分の財産はすべて六郎さんに渡したいと思っていましたが、他の兄弟は特に財産に興味はないだろうから、遺言などは作成していませんでした。

六郎さんは、次郎さんに遺言書の作成を依頼しようか迷っていましたが、なかなか言い出せないうちに、次郎さんの認知症は進み、令和3年1月1日に亡くなりました。

次郎さんの相続財産は、自宅:1500万円預貯金:1500万円でした。

次郎さんは、6人兄弟で、亡くなっている兄弟もいましたので、相続人は全部で10名にものぼりました。

六郎さんは、次郎さんの葬儀費用を負担し、自宅の片づけをした上、相続人を探したり、遺産分割の手続を行わなければなりませんでした。法定相続人の人数も多かったため、次郎さんの生前の財産管理についてあれこれと質問をしてくる人、なかなか連絡がつかない人、自分からは何も動かない人などがおり、非常に多くの労力と時間がかかってしまいました。

最終的には、六郎さんは、法定相続分(1/5)の600万円を取得しましたが、今までかかった費用や労力を考えると、納得のいく金額ではありませんでした。相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合は、相続人がご高齢の場合も多く、代襲相続となることも少なくありません。

そのため、遺言書で予め遺産の分け方を決めておき、残された方にスムーズに財産が承継されるようにしておくのもお勧めです。

《コラム:相続発生後にかかる費用?》

相続発生後は、葬儀費用、自宅の片づけ費用、施設や病院の費用などがかかります。また、財産を承継するためには、戸籍の取得費用、不動産がある場合は登記手続費用などがかかります。相続手続を専門家に依頼すると、専門家の費用もかかります。その他、被相続人の自宅が空き家となった場合には、管理費用などもかかってきます。

相続財産を取得するまでには、20~50万円程度、多い場合は500万円程度かかることもあります。これらの費用の負担者をめぐって揉めるケースもとても多いので、なるべくスムーズに相続財産が承継できるよう、生前に準備をしておくと良いでしょう。